久しぶりの更新です!!
STRAIGHVER11.危機
12.邂逅
を追加しました。
またいつ更新できるかわかりませんが・・・
感想をお待ちしています!!
では!!
現在、夢限の英雄章―SIDE:HOME―で管理人(ENGA)が執筆、好評連載中の作品、
「STRAIGHVER」
(ストレイヴァー)

「完全オリジナル創作:リアルスーパーロボットストーリー」
を掲げ、SF性、ロボットアクション、恋愛や人間模様等を追求していきます!!
このSIDE:BLOGでは、「夏休み特別企画」としてこのSTRAIGHVERのエピソードをブログに掲載していきたいと思います!!
これを読みまして興味を持った方、デザイン等が気になるという方は・・・
STRAIGHVER HOME
から、一気に一覧で読むことが出来ます!!そちらには、イラスト、メカニックデザイン、キャラクターデザイン、また「勝手に想定声優」や「勝手にイメージソング」等もチェックすることが出来ます!!
では、是非一読ください!!
10.交流
4/19 16:00
スロッドル邸
翌日、今日は休日で学校も無かった為・・・柊真は自室にいた。本来ならば、休日練習で学校に集まるはずなのだが、未だにフィナは怒ってるというか、拗ねてるというかで・・・結局今日の練習は中止な雰囲気だった。
時計を見ると、昼の3時を回っていた。
このまま、こうして家にいてもなんら問題は無いのだが・・・何もする事が無い時ほど、思考が行き着く先は決まっている・・・。
あの化け物・・・VOLVEが今にも大群で攻めてくるのではないか?
一瞬にして地球が滅亡してしまうのではないか?
そんなことばかりが、頭を振り払っても否応なしに付きまとう。
だから・・・
柊真は学校に行くことにした。自主練である。何かやっていれば、少しは気が紛れるかもしれない。
ギターケースを持つと、自室、そして家から飛び出した。
16:20
フォルフォード学園 空き教室
教室に着くと、そこには柊真1人・・・の、はずだった。だが、そこにはもう1人の少女の姿がある。柊真は思わず、眼を疑う。
「威舞・・・」
口からその言葉が漏れると同時に、柊真は踵を返しその教室から出ようと思った。彼女と2人きりなんて、耐えられない。彼女は柊真にとって非日常を表す、破壊を示す恐怖・・・畏怖の存在なのだから。彼女に背中を向けたとき・・・
「まって・・・」
威舞の口から出た言葉は、そう聞こえた。そしてその声に、思わず柊真は足を止めてしまう。なんだかんだで、この2週間、彼女と1つ屋根の下で暮らしてきたのだ。だが、こうして彼女の方から何らかの希望を聞くのは初めてだった。
・・・表情は相変わらず無表情そのものだったが・・・
「何?」
柊真の声も、ある種冷徹だった。それは、彼女に対する恐怖感・・・そしてそれを悟られまいとする意思・・・その2つの表れである。
「こいって・・・?」
こい・・・?
コイ・・・?
恋・・・!?
とたんに柊真の顔が赤くなる。何故火照っていた。今までの緊迫した雰囲気から、2人だけの教室の空気が変わる。
(こいつ・・・いま恋って言ったよな・・・!?“来い”でも“鯉”でも“故意”でもない・・・恋だよな・・・?)
昨日と違い、今日は教室に夕焼けは出ていない。だから、柊真の顔が赤いのは・・・単純に恥ずかしさのみである。
「どういう意味だ・・・?」
必死に冷静を装い、柊真は明後日の方向を向きながら威舞に訊いた。
「きのう・・・さおりが・・・」
柊真は、威舞の話を聞く。相変わらずの単語飲みの文章で、助詞がまったく無い為、理解するのに時間が掛かったが・・・要約するとこういった事らしい。
何でも、昨日の練習後結局2人はフィナに追いつけなかったらしい(威舞の場合は家に帰れば必ず会えるのだが・・・こういう性格だから、2人であっても会話が進まないだろう)。そこで、威舞とさおりは公園でクレープを食べながら2人で話をしたらしい。
(つくづくクレープと縁がある子だな・・・)
柊真は、そう思う。
そこで、さおりは『威舞が柊真に恋をしていて、それを意識した柊真がギターでミスをしている』と思い、威舞に訊いたらしい。つまり、エイジとさおりで、お互い同時に威舞と自分に聞いたわけだ。
そこで威舞は恋の意味がわからず、話が中途半端に終わってしまい(話を続けるつもりはあったらしい)、その恋の意味を知りたくてたまたま教室にやってきた自分に問いただしたわけだ。
話が一周してしまった。彼女は最初の疑問点に戻る。
「こい・・・なに?」
無表情で、そんなこと改まって訊かれても・・・
普通、17歳にもなって“恋の意味をしらない”というのも珍しい。というか、普通なら有り得ないだろう。
しかし、この無口な少女が、威舞が、芝居やジョークをしている様にはどうしても見えなかった。
「なに・・・?」
無表情でそんなに近づかれても・・・柊真は顔を背け、こう言った。
「俺も知るかよ」
本当なところ、“恋とはい何か”を語れるほど、自分には恋愛経験はないし、興味もなかった。
最も、彼女の“知らない”とは意味合いが少し違う気がするが・・・
「・・・」
そう言うと、彼女は自分な近づくのを止めた。
・・・・・・・・・沈黙。
もともと、柊真も威舞も喋る方ではない。周囲にエイジやフィナといったマシンガントークボーイ&ガールがいて、初めてギリギリのところで会話が成立するのだ。
柊真も彼らがいなければ、威舞のような“いつでも無表情”になってしまうかもしれない。
いや・・・既に無表情か。
昨日の1件で再び自分が・・・“孤独”であると痛感していた。・・・今までは自分から距離を置いていた。でもこれからは違う。距離を縮めても・・・みんなには話せない事がある。そう・・・抱えこむしかない。
例え話したとしても『冗談だろう?』が関の山である。
顔に入った傷に触れる。
共有出来ない秘密・・・話せない悩み・・・やはり自分は“孤独”だった。
17:30
彼女との沈黙の中、柊真はふとそんなことを考えていた。
景色は、青空から夕焼けに変わる。窓から見える桜は完全に散り、今はただ緑色の木々が風に靡いているだけである。
・・・気づいた。
(こいつなら・・・)
そう、身近に存在している。この世界の実情を知っていて話もわかるはず・・・
だが・・・
柊真は憚った。STRIGHVERやヴォルヴに関する事を聞いてしまったら最後・・・例えば彼女なら『7月24日23時30秒に敵総攻撃』とか無表情でいいのけてしまう気がした
のだ。前に会ったハルト中佐は『そこまでの時期は特定出来ていない』と言っていた。だからそんなことありえない。しかしそれでも・・・怖がった。
・・・彼女の、存在が。
「しゅうま、たたかわない・・・?」
無言な世界を壊し、彼女は口を開く。
「はるとちゅうさ、断ったって。すとれいばー乗ること・・・どうして?」
どうして戦わないのか?か・・・STRIGHVERとやらにどうして自分が乗らないのか・・・
そんな理由、1つしかない。怖いからだ。
「威舞は怖くないのか?」
そう聞いた。
「怖い?こわい・・・なに?」
彼女は恐怖を知らないのか?
いつ死ぬかも分からない戦場に身を投じていることに、微塵の恐怖もないのか?
「いつ死ぬか・・・分からないんだ?パイロットなんか尚更だ。何で、お前はそんなことを続けるんだよ・・・」
「やれ、と言われたから」
「自分の意思は?お前の気持ちは・・・!?」
「いぶは・・・イヴだから・・・」
訳が分からない。
「どういう意味だよ?」
「めいれい、従う」
それじゃあ・・・ただの人形じゃないか!!
「いままで・・・ずっとそう・・・」
その言葉にハッとした。まさか・・・
「初めてここに来たとか“基地に居た”って言ったよな?」
頷く威舞。
「そこから、出たこと無かったのか?今まで・・・」
威舞は、首を縦に振った。
じゃあ・・・この少女は、あのSTRIGHVERに乗る為、パイロットになる為だけに育てられたっていうのか?
・・・・・・そんなこと・・・
「寂しくなかったのか?」
「さびしい・・・なに?」
この少女は知らないのだ。寂しさを。いや、寂しくない時を感じたことがない。
だから、今、寂しさを感じることが出来ないのだ。
寂しさだけじゃない・・・。
怒り、喜び、悲しみ・・・。
恋もそう・・・。
全ての感情を封印され、ただの人形として・・・育てられて来たのだ。ただ、戦う為に・・・。
「聞いてろ」
そう言うと、柊真はギターケースから愛用の青いギターを取り出した。夕焼けに反射したメタリックブルーが、独特の雰囲気を醸し出している。
弾いた。
ただ、全力で。
ギターを初めたきっかけは、弾いているときの爽快感と、弾き終えた時の達成感を求めていたからだ。つまり、自分の為。
だけど今、初めて誰かの為に弾く。全力で相手に何かを伝えようとしている。
それは彼女が味わった事がないものだろう。
数十秒後、柊真渾身の演奏は終わった。
いきなり演奏しだしたからか、威舞はただ自分を見つめている。相変わらず無表情だったが、たぶん驚いているに違いない。
「どうだった?」
威舞に問う。
「・・・すごい」
柊真は少し笑って、こう言った。
「それが、感動だよ」
無表情だった彼女の顔・・・いや、瞳。その瞳に少し光が差し、輝き始めた気がする。
「おしえて・・・」
威舞は口を小さく動かして、そう言った。
「えっ?」
言葉がよく聞こえなかったことと同時に、信じられない意味に聞こえたので、柊
真は聞き返した。だが、帰って来たのは同じ言葉。
「ギターおしえて。きょう、そのためにここにきた・・・がっき、あると思って」
断る理由はない。
柊真の中の彼女に対する恐怖心・・・それは自然と消えて言った。
17:40
そして・・・
ドアの影から2人の人影があった。それに、柊真と威舞は気づいていない。エイジとさおりである。彼らも自主練に教室に来ていた。前もって打ち合わせて
いたわけではなくたまたま学校の前で一緒になったのだ。そして教室に入ろうとしたところで、ドアに伸びた手が止まる。そう、柊真と威舞が既に自主練を開始していたのだ。
しかも・・・
「あの2人、やけにいい雰囲気ですわね」
威舞にギターを持たせ、柊真はそれを後ろ・・・つまり威舞の背中から手を伸ばし支えている。どうやらギターを指導しているらしい。
2人は気づいていないが、柊真の胸板と威舞の背中がかなり密着している。まるで・・・そう、恋人のように。
「やっぱりあの2人付き合っていたんでしょうか?」
覗き込むさおりに対して、エイジは言った。
「柊真はそんなんじゃない・・・ただ威舞を許したんだ」
あいつのあの顔を見れば判る。笑顔だった・・・めったに見せない、柊真の笑顔。
「どちらにしろ・・・このままにしておきましょう」「ああ」
さおりの提案に、エイジは親指を立てる、サムズアップで返答した。
夕焼けに包まれている、幸せそうなあの2人の関係を壊すことは、今の自分達には
出来ないし・・・それに・・・
(上手くいけば、逆にさおりと2人きり・・・)
なんて、おいしい事をエイジが考えないはずがない。
「どうしてそんなにニヤニヤしているんですの?」
さおりは不安げな表情を自分に向けている。エイジは慌てて“キリッ”とした表情を作り・・・
「いやなんでもないさそれよりここから離れて2人で映画でもどうかと思うんだがこの後用事とかあるかいさおりさん」
カッコつけてるつもりだが、どう考えても棒読みセリフにしか聞こえないのは・・・
さすがエイジである。
しかしさおりは、エイジの言葉ではなく、違うことに気をとられていた。
「フィナさん・・・!!」
廊下を怒ったように闊歩することから考えても、まだ機嫌はよろしくないらしい。
「・・・」
しかも、エイジとさおりを無視し柊真達がいる教室のドアを開けたのだ。
「おい!フィナ!!」
エイジの制止なんて、どこ吹く風で・・・彼女はドアが開くと同時に何かを爆発させ、マシンガンのように喋りだした。
「家にいないと思ったら自主練!?そりゃお兄ちゃんには自主練が必要ですよ!!すごーく必要ですよ!!でもね、1人で出来るバンド練習には限界がアルでしょ?どうして同じ家にボーカルが住んでるんだから、“練習付き合ってくれ”の一言も言えない訳?そりゃあたしだって忙しいし?お兄ちゃんみたいに宿題踏み出したりしないからいろいろたいへんだけど、どーしてもって言われたら、そりゃ考えてあげても良かったのに!!何も言わずにいくってどーゆーことよ!!それとも何!?あたしが邪魔な理由でも・・・」
ここまで一気に言って、初めてフィナは気づいた。柊真と威舞の密着体勢に。フィナの頬が急に引き攣り、顔をしかめた。
「・・・何してるの?」
ここに来て、柊真は威舞と身体が密着していることに気づき、慌てて身体を離した。自分もだが、威舞もフィナも突然の出来事に目が点状態である。更に言えば、柊真とフィナは顔が赤くなっていた。違う感情で・・・だが。
「ああ・・・あたしはお邪魔って事ですね!!」
当分フィナの機嫌は斜めだろう・・・柊真はそう覚悟した。NEXT 11.任務
現在、夢限の英雄章―SIDE:HOME―で管理人(ENGA)が執筆、好評連載中の作品、
「STRAIGHVER」
(ストレイヴァー)

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では、是非一読ください!!
09.感情
4/18 16:50
フォルフォード学園 空き教室
「1(ワン)、!」・・・2(ツー)、3(スリー)、HIGH(ハイッ)2(ツー)・・・1(ワン)
)
エイジの声に合わせて、それぞれの楽器が響きだす。
ボーカルのフィナは歌い出しへ備えるように、目を瞑り気持ちを集中させる。
さおりは普段の大人しい感じからは想像がつかないほどのスティック裁きで、ドラムを叩きつける。
エイジはそんなさおりとは逆に見た目と同様に、普段と変わらずそのテンションの高さを反映させるかのように、ワインレッドのベースを振り回していた。ギターより目立っているベースというのも、また珍しい。
そして・・・
(俺は、こいつを握った)
コバルトブルーのギターを、柊真は見つめる。
そして、イントロが終わりフィナが歌い出す。
「カッコつけてるつもりで得意になって〜」
この曲はもともとdoaというバンドの「英雄」という曲で、あまり世間的には有名ではなかったが、エイジのお気に入りの一曲である。あいつらしい、熱くて真っ直ぐした歌詞の曲だった。
新暦120年現在、こうした西暦2000年代の楽曲が大ブームになっている。“リバイバル”というものだろうか?最近のバンドはこぞってカバーしているし、歌詞や曲調を真似ているものも多い。
この「英雄」は男性ボーカルの曲だが、フィナは女性としてそれを昇華・・・格好良く歌い上げていた。
「闇が怖くてどうする〜」
Bメロ部分が終わりへ近づく。
「アイツが怖くてどうする〜」
まもなくサビである。ギターが最も格好良く入る部分だった。
「足踏みしてるだけじゃ〜進まない!!」
今だ!!
ジャカン!!
鈍い音が響いた。その音は、他の楽器の音とは違い、その部分だけ浮いて聞こえた。
そう、柊真がミスをしたのだ。
それでも他のメンバーはカバーをしようと、演奏を止めようとはしなかった。それは本番でのミスを想定しての、当然の行為。
が、そのミスは大きく・・・いや、柊真が複数ミスをしてしまい、だんだんと他の楽器のペースが乱れ始める。・・・やがて・・・フィナは歌うことを止めた。
「帰る!!」
柊真のミスに怒ったのか・・・?手持ちの楽器がないことをいいことに、柊真の妹は圧倒的な速さで鞄を持つと練習をしていた教室から飛び出した。
「ちょっと・・・!!フィナさん・・・!!」
さおりの制止も聞かずに・・・である。
「悪りい」
柊真は呟くと、机上にギターをそっと置いた。
「別に、ミスは誰にでもありますから」
さおりはそう言うが・・・柊真にはこのミスの原因が、何となく分かっていた。
柊真の視線の先には、バンド練習を見守る為にやって来たのか・・・いつも練習をしている教室に来る少女の姿がある。威舞だ。
彼女は、バンドメンバーではないが、こうして練習を見に来ていた。確かにメンバー全員と同じクラスであれば、自然な流れでここへ来るだろう。いずれは何か楽器を持たせても良いかもしれない・・・と実質最年長リーダーであるエイジは考えていた。
だが、演奏中に後ろから柊真の姿を見ていたエイジは気づいていた・・・彼女に彼が
気を取られていることを。
今は・・・
「さおり、威舞を連れて・・・フィナの様子を見に行ってくれないか?」
「でも・・・」
さおりは意気消沈している柊真を心配そうに見つめている。
「ここは男と男!!サシで話す場所になる!!だから・・・」
その先はさおりも即座に理解したらしい。要は『オレに任せろ』エイジの言いたいことを要約すれば、そういうことだ。
「はい。行こう?威舞さん」
威舞は心配そうな表情(少しだけ)を浮かべたが、頷くとさおりに続いて教室を出た。
17:00
男2人なった教室で、エイジと柊真は窓の外を見つめていた。
日が落ち、夕焼け模様となっていく。オレンジ色の空は・・・綺麗で、儚い。
エイジは口を開いた。
「柊真?」
「何だ?」
「威舞の事好きなのか?」
・・・・・・・・・沈黙。
そして・・・
「バカやろう!そんかことがあるか!!」
夕焼けのせいなのか、顔が赤い。
いや、違う。エイジは分かっていた。これは単に夕焼けのせいなのだと。
「冗談だ」
柊真は恋なんかで、こんな風になる男ではないことを。
「でも、実際・・・最近のお前はおかしいぞ。確かにバンドに戻って来てくれたのは嬉しい・・・でも、前のお前とは違う・・・」
「そんなこと・・・」
「急にオレ達に優しくなったり・・・逆に威舞だけに冷たくしたり、それに、練習中のミスが多すぎる」
柊真は遠くを見ていた。窓の外・・・海・・・空・・・暁色の景色を。
「理由(わけ)・・・以前と変わったことって言ったら一つしかない・・・“威舞”だ」
「・・・それで俺が恋してるとでも思ったのか?」
「初めはそう思った。でも・・・違うんだろう?」
「・・・」
「それぐらい、オレにだって判る・・・」
・・・・・・・・・沈黙がまた流れた。
「何があった?」
エイジの問いに、柊真の口元が小さく動き、こう告げる。
「1人にしてくれ・・・」
エイジは、教室を出た。最後に
「これだけは言える。オレ達は友達だ。何かあったら・・・言ってくれよ」
背中越しに聞こえた声は、優しかった。
「悪い・・・エイジ」
あれから2週間近く・・・
あの・・・ハルトが伝えた話は、今も柊真を苦しめ続けていた。
英雄、冴木恭祐は直感に頼り・・・未来へ行き、崩壊した新暦120年9月10日の世界を見た。そして、いくつかのVOLVEと呼ばれる怪物に関するデータを集め、(その時代の)現代に機関。しかし、その際にVOLVEによってタイムマシンが破壊されてしまった為、もう未来へ行くことは不可能となってしまった。
そのマシン破壊の影響で、恭祐は植物状態となってしまったらしい。その為、現在のVOLVEのデータは、全て彼が所持していた端末や、カメラなどから得た情報である。
そう、彼は命懸けで・・・奴等の情報を人類に残したのだ。
その影で、平和を謳歌していた・・・地球上の生物達。
それは、自分も含めて・・・だった。
バンドに復帰し、柊真は普通の生活を楽しむように心がけている。それは、明日がいつ無くなるかもしれない未来を知ってしまった以上、今を精一杯楽しむことしか、柊真には出来なかったから。
「もう、いつ明日がなくなっても・・・おかしくは無い」
恐怖に怯えながら、柊真はギリギリの自分を保っていた。
そして、そのギリギリの平穏の中で、唯一平和を乱す存在が・・・あの少女、威舞であったのだ。NEXT 10.交流
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08.明日
11:30
臨海小公園
白衣の男がいなくなった公園で、柊真は1人、立ち尽くしていた。
「嘘だろう・・・」
昨日から、この単語を幾度と無く呟いている気がする。が、今回のは正真正銘・・・“信じられない”・・・本当に、信じられない。
世界が・・・消えてしまうなんて。
明日が、もう僅かしか残されていないなんて・・・。
12:00
V.A.S.T メインファクトリー内 シュミレーショターポッド1号機
モニターに表示されている敵に、照準を合わせ、トリガーを引く。
ガシュッン
鈍い音と共に、砲弾が発射。1体のVOLVEを撃破した。これで、13体目。しかし、こんなものは実戦では何の役にも立たない。こんなパターン化された動きは、VOLVEはとってはくれないのだ。せいぜい、STRAIGHVERの機体動作を確認するくらいしか、このヴァーチャルシュミレーターは役に立たない。
シュナイト大尉も、その為に、このシュミレーターポッドの中に乗り込んでいた。彼の愛機である量産型STRAIGHVER「甲」は、現在強化型の装甲を取り付けている為、当分の間は使用できないのだ。その為に、感覚を忘れない為にこうして擬似操縦桿を握り締めている。
画面の中の敵を見据えながら、彼は呟いた。
「ヴォルヴ・・・か」
宇宙からやってきた地球外生命体で人類に敵対し、ありとあらゆるものを殺戮し、破壊する。鉄を喰らい、人の生血を啜る。その為に鉄ではない、超金属として“METAL(メタル):STRAIGHVE(ストレイヴ)”が、機体に採用されたのだ。この金属にはVOLVEが苦手とする反応粒子が含まれている。そう、吸血鬼(ヴァンパイア)が銀の弾丸(シルバーブレッド)を苦手とするように。
「何故、地球に来た・・・!?」
画面の中の敵は、答えてはくれなかった。
12:00
V.A.S.T メインファクトリー 機体整備用ハンガー前
ハルト中佐は基地に帰還すると、まず各ハンガーにて整備中のSTRAIGHVERの作業進行状況を整備担当に聞いた。
まずは、パイロットが必ず確保できるS-M01量産型STRAIGHVER「甲」の装甲強化進行状況だった。情況は予想以上に芳しくなく、1週間といわれていた整備は、最低1ヶ月は要するという。既に第1先行量産型STRAIGHVER小隊、小隊長であるシュナイト大尉も了承済みだという。
アメリカで開発中だったという正式量産型A-M01Aの元へ、彼らが使っていた先行量産型も送られた。同時にMETAL:STRAIGHVEの強化処置を施す為である。また、S-X04A/Eに装備されているエアファイターユニットを装備するという案も出ている。“STRAIGHVE(ストレイヴ):ENERGY(エナジー)”を放出できない為、あれほどの最高速度を叩き出すことは不可能であろうが、いずれ空戦能力を持つVOLVEの登場・・・V3A型の現出は眼に見えているのだ。今からそれに備えておくのは悪くは無い。
しかし、それらの調整で1ヶ月以上・・・というのは、現時点で実際にVOLVE現出予想地域をカバーするこちらとしては、不利と言わざるおえない。しかし、対極的な眼で見れば・・・仕方のないことになるであろう。
では、今は不在であるが、召集すれば必ず戦う意志のあるパイロット=タイプE・・・弓月威舞の専用機であるS-X02E、STRAIGHVER「剣」の復旧は?
だが、不可能であろう。現在、“剣”は両腕を失っている。特殊金属であるMETAL:STRAIGHVEをあの腕の形状に生成するのにどれだけの時間が掛かるのだろうか?予備パーツもあるが、最も難しいのはその接続部にある。従来の戦闘機などと同様に、ケーブルやファイバーなどによる電気信号で量産型は稼動している。しかし、XシリーズはSTRAIGHVE:ENERGYを信号状に変換する“S-00”と同じシステムで動いているのだ。その為、接続部の再構築には2ヶ月を要する。
つまり、これも即座に戦線復帰するのは不可能なのだ。
そして、現在開発中のS-X04A/E、STRAIGHVER「翔」。A/Eとあるのは、現在タイプAとタイプE、どちらが正式なパイロットになるのか分からないので担当者が迷って付けた型式である。
既に出撃可能なまでに完成されているが、従来の補助AIではその空戦時に伴う姿勢制御、滞空制御等まで対応できない。そう、パイロット1人で火器管制・空中姿勢制御・運動性能の3つを行うのはいくらSH計画で生まれたものでも不可能なのだ。
現在整備班が必死に新型AIの調整を行っているが、完成予定日は未定であるという・・・。
格納庫に並ぶいくつかの機体を、ハルト中佐は見つめた。量産型は全機アメリカにて調整中な為、自然とここにはSH計画対応機・・・X−シリーズが残る。
S-X02 STRAIGHVER 「剣(ツルギ)」
S-X03 STRAIGHVER 「刃(ヤイバ)」
S-X04 STRAIGHVER 「翔(ハバタキ)」
そして・・・
S-X01 STRAIGHVER 「拳(ケン)」
これは、最初期のXシリーズな為、起動すら不可能であり、一度は廃棄も検討された機体である。格納庫の隅に埃を被りながら眠っている。恐らく使い物にはならないだろう。
ということは、やはり使用できる機体は・・・
「S-X03、ストレイヴァー“刃”のみですか・・・」
言葉の方向を見つめると、そこにはスーツ姿の司令官がいた。
「弓月総司令」
敬礼を送ると、“刃”の下にいるハルト中佐の横に、弓月総司令もやってきた。2人の男はその機体を見上げる。
「この“刃”の強化案が提出された。明日にでも、君はこれの整備に携わってもらう」
「強化案?」
「たいしたものではない。1、2日で済む簡単なものだ。ストレイヴ:エナジーの圧縮率を上げる」
それは、こちらでも検討した。確かに、高出力のエネルギーを発生できる上に、簡単な設備でも可能だ・・・しかし・・・
「それは、パイロットであるタイプAに多大な負担が・・・」
「君は、昨日の戦闘データをチェックしたかい?」
「これから眼を通そうかと思っていました」
弓月はハルトに、データが纏められた端末を手渡した。彼はそれを開き、チェックする。
「これは・・・!」
威舞の乗る“剣”の3倍もの出力を・・・彼が乗る“刃”は叩き出していた。
「これほどの対応知があれば、圧縮率を上げても問題はないだろう」
「確かに・・・」
今まで圧縮率を上げられなかったのは、それによってパイロット自身のエナジーが減ってしまうと思われていたからであろう。もともと、STRAIGHVE:ENERGYの発動にSH計画体が必要だったのは、その人間と、METAL:STRAIGHVEを反応させることでそのエナジー粒子を発生させるためである。つまり、彼らはパイロットであると同時に、動力源でもあるのだ。
しかし、これならばいけるかもしれない・・・。
ハルトが想いを巡らせている時に弓月総司令は尋ねた。
「それで、彼はどうだったのだ?」
「えっ?」
「私が知らないとでも?」
彼には、隠し事は出来ない。
「協力できない・・・そう言っていました。確かに無理はないでしょう。この平和な世で育ってきた人間が、急に明日が無いと言われても・・・」
「彼の出生について、話したのか?」
(それは・・・)
ハルト自身、そこは彼に対しての説明を避けていた部分でもあった。
「話してないんだな・・・」
彼の表情を察し、弓月は言い放った。
「はい」
「そうか・・・」
「言っては逆効果かと。自分がそんな者だったと知れば・・・」
「君にそんな心遣いがあったとは・・・てっきりタイプAとみなしているだけかと思っていたよ」
それは・・・見なしていた。
今もそれは変わらないし、本来ならばこの緊急事態に際して拉致し、薬物でも何でも使って彼をパイロットにすべきであるとも考えていた。しかし・・・
そんなことを、この上官は望まない。
だから、何とか口で協力を願い出たのだが・・・
「彼は、自分が何者なのか知りたがっている・・・」
えっ?
ハルトは、上官を見つめた。
「どうしてそう思われるのですか?」
「私も・・・そうであったからな」
現在地球に潜伏していると思われるV1S型VOLVEは、3体撃破に成功し・・・残り27体。
しかも、これは先遣隊に過ぎない。そう、恐らくこれからの戦いに脅威となりうるSH計画によって生まれた者たちを排除する為の。
この先、宇宙から何が来るかは判らない・・・。
V1S型、V2F型、V3E型・・・冴木恭祐が見た世界に存在したこの3タイプ以外に何が存在するのか・・・?
・・・戦いは、そう簡単には終わらない。
いや・・・
敗北は、見えているのかもしれない。
12:00
スロッドル邸
柊真は家に戻って、自室に篭った。幸い、まだおばさんは戻ってきていない。
「そんなことが・・・」
新暦120年9月10日・・・冴木恭祐が見た、滅んでいた地球。それを阻止する為、設立された組織・・・V.A.S.T。
威舞が、その戦闘用ロボット“STRAIGHVER”のパイロット。
自分にも、その適正がある・・・。
「嘘だ・・・」
しかし、そう考えれば、昨日起きた事、全てに辻褄が合う。いや、合ってしまうのだ。
でも・・・
柊真は思った。
未来は、判りきっている。そう、破滅の未来が。その未来は消えない。どんなに頑張っても、その未来は変わらないのではないだろうか?未来を見て、変えることなんて可能なのだろうか?頑張ったとしても、そうなる未来だとしたら?
・・・滅びてしまう、地球が。
怖かった。
あの化け物と戦うのが。いや、戦って喰われるのが・・・。そして、昨日の威舞のようにいつかは感情を失ってしまうのではないだろうか・・・と。
「これから・・・どうすれば・・・?」
いつか、地球は滅びる。
では、それまでに自分に出来ることは・・・?
柊真は、エレキギターに手を伸ばした。
明日を、楽しんでみようと思った。NEXT 09.心情
現在、夢限の英雄章―SIDE:HOME―で管理人(ENGA)が執筆、好評連載中の作品、
「STRAIGHVER」
(ストレイヴァー)

「完全オリジナル創作:リアルスーパーロボットストーリー」
を掲げ、SF性、ロボットアクション、恋愛や人間模様等を追求していきます!!
このSIDE:BLOGでは、「夏休み特別企画」としてこのSTRAIGHVERのエピソードをブログに掲載していきたいと思います!!
これを読みまして興味を持った方、デザイン等が気になるという方は・・・
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07.恭祐
4/8 7:30
スロッドル邸 柊真自室
「朝・・・か」
ベットから少年は起き上がった。眼を擦りながら、昨日様々なことが起きたことを思い出す。
「夢だよな・・・」
自分で自分を嘲笑した。そう、そんなことがあるわけが無い。全て夢、幻。きっと、漫画やTVの見過ぎだろう・・・そんなに見ていないはずなのだが・・・。
とりあえず、布団から出て、顔を洗いにいこうと自室のドアを開けた。
「・・・おはよう、しゅうま」
銀色の髪の少女が、ドアをノックしようとする体勢で止まっている。
「朝ごはんできたって、ふぃなが」
ガシャン
柊真は、勢いよくドアを閉めた。
「・・・嘘、だろう?」
(夢じゃなかった)
そう、夢じゃない。今この世界に、あの少女・・・弓月威舞は存在している。思い返せば思い返すほど、昨日の出来事が夢でないと告げていた・・・。
その日・・・柊真は学校を休んだ。頭が痛いとかいろいろ言って。フィナは最後まで、“仮病ではないか?”と疑っていたが、おばさんの“そんなに人を疑ってはいけません”の言葉でついに折れたらしい。しぶしぶ威舞と2人で学校に向かった。
そんな2人の後姿を、自分の部屋の窓からカーテンをそっと捲りながら見つめた。
「フィナに何かあったら・・・許さないからな・・・」
彼女の存在が判らない。
何の為に、ここに来た?この街に、この家に、この学校に?
そして・・・彼女の言葉・・・
アダム
(俺を、アダムと呼んだ。アダムとは、何だ・・・?)
謎ばかりが柊真の頭を駆け巡り、その謎ばかりが膨らんでいく。更に、あのロボットに・・・あの鋼鉄の蜘蛛の様な化け物。
普通に考えれば、彼女は正義のロボットを駆る正義の少女で・・・あの鋼鉄の蜘蛛は、人間を食らう邪悪な化け物・・・ということになる。
「・・・そんな馬鹿な・・・?」
新暦に入った120年間、あのアウトゼロ大戦後には・・・何の紛争もなく、世界は平和そのものだった。それが・・・そんなことが・・・?
あるはずが無い・・・。
それに・・・
心の奥で、彼女が正義の味方だとは、柊真にはどうしても思えなかった。
10:00
怖かったが・・・行くしかない。
おばさんが買い物に行った頃を見計らい、柊真は家を出た。制服姿ではあるが、別に学校に行くわけではない。
「昨日の・・・公園へ」
何か証拠が残ってるかもしれない。もしかしたら、あのロボットの腕が落ちていて、そこにどんな組織か書いてあるかもしれない。少なくとも、家でジッととしてるよりかは・・・駆け回って、何か1つでも謎を解くことのほうが、柊真にとっては大事だった。
10:10
臨海小公園
しかし、その公園には柊真が期待していたようなものは何一つ残されていなかった。
風に靡く木々。葉桜になっていく自然。
「やっぱり・・・夢だったのか?」
呟いた自分に、柊真は首を振る。
ではあの少女は何だ?何故いる?彼女がいるということは夢ではなく・・・
「いや」
彼女の転校、家への居候は真実で・・・ここの公園での出来事・・・つまり、あのロボットと怪物の戦いが夢であったとしたら・・・?
テレビで見たことがある、人は何らかの条件が重なると・・・ないものが見えたり、意識を失うらしい。つまり幻覚である。
そう考えれば、少しは柊真にも理解出来た。そしてあれだけ荒れていた心も落ち着きを取り戻し始める。
「帰ろう・・・」
今から帰り、荷物をとって急げば最後の授業には間に合う。別に出たくもなかったが、この世の中には出席日数という無視出来ない不条理極まりないシステムがあるのだ。これから先の事を考えれば、1時間くらい出ておいて損はない。
柊真は振り返った。
「・・・柊真・スロッドル君だね?」
目の前には白衣の男性がいた。しかも白衣の下は見たこともないユニフォームである。
名前を呼ばれる筋合いも、心当たりも全くない。
「あなたは?」
「バースト所属、ベル・ハルト中佐だ」
“中佐”・・・?聞き慣れない言葉である。確か軍隊の階級を示す言葉であると授業でならった記憶があった。
(軍・・・?この時代に?)
柊真は自分を嘲笑した。ゼロアウト大戦以後、世界から戦いというものは姿を消した。そして、新暦に突入後・・・世界中のありとあらゆる武装組織は解体された。
そう・・・柊真にとって“軍”とは時代錯誤もいいところであるものなのだ。
しかし・・・
「昨日の出来事を覚えているかい?」
その言葉に柊真は鋭い視線を向けた。こいつは・・・!!
「あの時、君の戦いを見ていた者だ。君には才能がある・・・どうだい?自分達の組
織で戦わないか?」
自分をスカウトしようとしている・・・そのことくらいは柊真にも理解は出来た。しかしたがらといって首を無言で縦に振るほど、柊真・スロッドルという男はバカではない。
「俺をスカウトしたいなら、答えろ・・・昨日のアレはなんだ・・・!?」
「アレ・・・とは?」
「わかっているはずだ・・・あの鋼鉄の蜘蛛、それに銀色のロボットのことだ・・・」
目の前の男・・・ハルトとか言ったか?彼は、柊真の眼を見て、聞いた。
「それを話せば、協力してくれるか・・・?」
探っている・・・それは柊真には理解できた。そして、ここで“協力しない”といえば、教えてはくれないだろう、全てを。しかし、そう簡単に協力する気もさらさら無かった。
だから
「内容次第だ」
柊真はそう答えた。
目の前のハルトは少し考えるような表情を浮かべたが、やがて
「・・・まぁいいだろう」
そう言うと、その口を開いた。
「あの鋼鉄の化け物は地球外生命体・・・我々はVOLVE(ヴォルヴ)と呼称している」
「ヴォルヴ・・・?」
「簡単に言えば、鉄を喰らい、人肉を啜る・・・殺戮生命体だ」
その表現に、柊真の脳裏には昨日の惨劇がフラッシュバックし、少し吐き気を覚えた。
「そのヴォルヴに対して設立されたのが、我々公的私設防衛軍V.A.S.T」
公的私設防衛軍・・・?
その表現に柊真は疑問を覚えた。“公的”と“私設”・・・軍隊などの歴史に詳しくない柊真が聞いても、一見矛盾する2つの単語が混在している。
そんな表情を見抜いて、ハルト中佐は続けた。
「簡単に言えば、統一国家に認められた個人的な組織・・・ということになる」
しかし、私設軍といえば、西暦来の言葉を使えばつまりそれは“テロリスト”と同意の者だと、柊真は考えていた。
「国家は動けないんだよ。公(おおやけ)に軍を作るようなことは出来ない。・・・ゼロアウト大戦は、君も知っているかな?」
西暦最後の戦争にして、人類最後の戦争である。あれをきっかけに、世界統一が日本を中心に進んだとも言われている。
「そして、西暦2050年、平和を刻む新たな歴史・・・新暦が始まった」
「それは、俺だって知っている・・・」
教科書の言葉を焼きまわして、繰り返しているようにしか柊真には聞こえなかった。
「では、第2次ゼロアウト戦争が・・・は知っているかい?」
「えっ・・・?」
「知るわけが無い・・・実際は起きなかったのだから。“時空転移装置”・・・すなわちタイムマシンによって」
タイム・・・マシン・・・?
この新暦120年になっても、そんな単語はSF、空想の産物だと・・・柊真は思ってきた。
だが・・・・ハルト中佐は、嘘をついている様子は無い。
彼は話し始めた。
かつて、人間と、ゼレオンと呼ばれる別の種族が地球全土で争った戦争・・・それが“ゼロアウト大戦”と呼ばれている。西暦2000年代初頭に起こったそれは、数名の戦士達の活躍によって終結を見た。
だが、その後・・・どうやらゼレオンの残党が、反旗を翻し地球全土を再び制圧。人類は敗北した・・・これが“第2次ゼロアウト大戦”の真相である・・・。
そう、ハルト中佐は言った。
「そんなバカな。じゃあ、ここにいる俺はどうなるんですか?人間は今も生きている!」
「そう、実際は起きなかった。いや・・・“起こさせなかった”と言った方が適切かもしれないな。伝説の英雄、冴木恭祐によって」
ゼレオンと人間の和平を提唱し、地球に生きる種族の全ての融和を図った人物。そして新暦の始まりを告げた英雄。
「彼は特殊な適正の持ち主でね。あの時空転移装置を使って、時間を飛べる類稀なる能力を持っていた。そして、その力を使い・・・悲劇を2度も防いだ」
「2度・・・?」
「そう、1度は第2次ゼロアウト大戦阻止、そしてもう1つは・・・ヴォルヴの襲来を教えてくれた」
空は青かった。
だが、柊真に向けられた言葉は、この平和の世界の裏側を指していた。
そう、柊真が見てきた世界は、偽りに満ちていたのだ。NEXT:08.明日