現在、夢限の英雄章―SIDE:HOME―で管理人(ENGA)が執筆、好評連載中の作品、
「STRAIGHVER」
(ストレイヴァー)

「完全オリジナル創作:リアルスーパーロボットストーリー」
を掲げ、SF性、ロボットアクション、恋愛や人間模様等を追求していきます!!
このSIDE:BLOGでは、「夏休み特別企画」としてこのSTRAIGHVERのエピソードをブログに掲載していきたいと思います!!
これを読みまして興味を持った方、デザイン等が気になるという方は・・・
STRAIGHVER HOME
から、一気に一覧で読むことが出来ます!!そちらには、イラスト、メカニックデザイン、キャラクターデザイン、また「勝手に想定声優」や「勝手にイメージソング」等もチェックすることが出来ます!!
では、是非一読ください!!
03.少女
新暦・・・
それは新たな時代の始まりを告げた。「西暦最後の戦争」から50年、その恒久的な平和が保障された時、“新暦”という時代は始まった。
もともとその「西暦最後の戦争」で、世界はある種統合されていた。日本以外の国が国として機能しなくなり始めていたのだ。自然な流れで日本がリーダーシップを取り、統一への道を歩むこととなる。無論、統一や平和が簡単な道だといえば決してそんなことはない。むしろ・・・苦難の道であった。それらを乗り越えた2057年、“新暦”は始まったのだ。
この地球を統括している世界統一国家は、安全とそのシステム上、首都をランク付けして様々な場所に置いている。その多くは、中心国である日本に多く存在していた。
第1首都 東京
第2首都 大阪
第3首都 ニューヨーク
第4首都 ロンドン
第5首都 静岡
Etc.
これらいくつものの首都が、互いをカバーしあい、“何かがあれば”そこに首都や権限を移動する。それがこの多首都システムの目的だった。
だが・・・何故、こんな平和な世界に“何かが起きた為の”多首都システムが必要なのだろう?軍隊もない、戦争もない・・・。この新暦の世界に、武装というものは存在しないというのに。
いや・・・
・・・・表向きは。
4/7 10:00
V.A.S.T メインファクトリー
第五首都静岡から少し離れた、ここ第十七首都長野。この新暦時代になってもあまり発達していない山奥・・・のどかな町並み。その山奥に、対地球外生命体特別迎撃組織・・・VOLVE.Attacker.Special.Team・・・通称V.A.S.Tの秘密本部があることは・・・極秘中の極秘とされていた。
その基地内のメインファクトリーには、3機の量産型STRAIGHVER・・・通称「甲」が先日の戦闘から帰還し、各種のメンテナンスを受けている。
そんな様子を少しはなれたパイロット待機室から、ブライ・シュナイト大尉は見つめていた。待機室には広い強化型の窓が設置されており、整備班の様子がよく見える。彼ら整備班の頑張りで、自分達パイロットが頑張れるのだから。
「大尉!」
振り返ると、量産型STRAIGHVER2号機のパイロット、カレナ・瀬崎中尉の姿が飛び込んできた。
「どうした?瀬崎中尉?」
「コーヒー飲みますか!」
かなり・・・元気な声で訪ねられた。そうなると断ることも出来ないし、断る理由もない。ちょうど、手も喉も何かほしがっていたところだった。
「じゃあもらおうかな。ブラックで」
「はい!」
そういうと彼女は自動で開くドアから出ようとした・・・が、
「あっ!」
ドタッ!
ドアの、ちょっとした出っ張りに足を引っ掛けそのままうつ伏せに転んでしまった。
「大丈夫か!?」
いつものことながら、シュナイト大尉はいつも焦らされる。
「大丈夫です・・・」
そういいながらも、彼女の顔は赤くなっていた(もちろん、血ではなく恥ずかしさで・・・であろう)。
「じゃあ、コーヒーついで来ますねって・・・あっ」
ドタッ!
また転んだ。彼女は右手で恥ずかしそうにポリポリと頭を掻くと、そのまま待機室を飛び出した。
「はぁ・・・」
彼女は、瀬崎中尉は自分を励まそうとしているのだと、シュナイト大尉は思う。トーヴ少尉を失ったことで、暗い雰囲気になるのが嫌のだろう。だが、自分達は軍人だ。この平和な社会・・・各国が1つとなり、各軍隊が武装解除し、平和な世界となって。最後の武装組織だったA.Ze.T.もとうの昔に解散した。
「本当に最後の武装軍・・・」
それがV.A.S.T。だが、V.A.S.Tの敵は地球外生命体、未知なる敵である以上危険度は高い。死は覚悟の上だった。
「でも・・・」
それでも23歳、若かった彼を失ったことは大きい。格納庫で整備されていく機体・・・整備班はフル稼働だった。先行量産型STRAIGHVERは3機。その内の1機は機体に大きな穴が空いていて、とても再起動できる状態ではない。それを確実に整備していく。
だが、パイロットはもう戻らない。
「これは、リーダーである僕の責任でもある・・・」
窓の外・・・遠くを見つめながら、シュナイトは呟いた。
「それは背負いすぎですよ、シュナイト大尉」
ドアの開く音と同時に声が聞こえる。振り返ると、そこには白衣姿の青年が立っていた。彼に向かって敬礼を送る。
「ハルト副司令」
このV.A.S.T内で二番目に高い位を持つ男は、笑顔でこう言った。
「確かにトーヴ大尉の殉死は大きい。しかし、彼は我々研究班に様々なものを残してくれた」
そう言いながら、ベル・ハルト副司令は窓の外を見下ろす。整備班の横に複数の白衣の者達がボードを片手に機体をチェックしていく。
「ストレイヴァーの胸部装甲に関しての弱点。それに行動を停止したはずのヴォルヴの生体構造。それらをフル稼働でチェック中だ」
ロシア人特有の銀色の髪を靡かせながら、彼は言う。シュナイト大尉は怪訝そうな表情を浮かべた。彼の言葉に棘はないし、本心から思っていることも判る。言っていることも正論だ。だが、それではまるでトーヴ少尉のことを“仕方ない犠牲”と言っているように聞こえて仕方ない。そんな彼の心情を見越してか、ハルト副司令は口を開いた。
「無論、トーヴ少尉のことは・・・残念に思う」
これがハルト副指令の精一杯の想いだった。V.A.S.Tには統率を図る為、“階級”が曲がりなりにも存在している。曲りなりにも・・・といったのは、組織は軍隊ではなく形上は私設組織ということになる。その為、かつての軍隊のような大将や元帥といった高い階級は存在せず、役職に応じた階級が振り当てられる。最高でも大佐までだ。
自分は階級で言えば、中佐。シュナイト大尉より上であった。その上の階級にものを申そうとはしないし、したくないであろう。ならば彼の心情を察してこういったように思いを伝えるのが・・・上官として自分が出来ることではないだろうか?と思うのだ。
「それより副司令、お忙しい中わざわざパイロット待機室まで来たのは、何か事情があってでは?」
「・・・その件なんだが」
息を深く吸い込み、ハルト副司令は言う。
「この1週間の間、S-M01型先行量産型ストレイヴァーの使用は不可となった」
その言葉に、当然シュナイト大尉は驚きと焦りの表情を浮かべた。
「何故です!?ヴォルヴ先行攻撃隊は30体近く太平洋のどこかに既に落下しているんですよ?今主戦力である3機のストレイヴァーを1週間も使用不可とするのは・・・!もしその間に本土上陸があった場合はどうすれば!!」
我々V.A.S.Tは戦う為の組織だ。トーヴ少尉のような犠牲は、言い方は悪いがしょうがない。だが、上陸し・・・一般の民間人に危害が及ぶことは・・・なんとしても避けなければならない!なのに・・・何故このタイミングで先行量産型STRAIGHVER3機が使用不可なのだ?シュナイト大尉は腹の中で沸き上がる感情で一杯だった。
「・・・整備は1日で間に合うというお話では!?」
窓の外に整備されていくSTRAIGHVERは、トーヴ大尉の3号機を除き、既に出撃可能のように見える。
「落ち着いてくれないか?これでも最大限の努力の結果なんだ。レアメタルであるメタル:ストレイヴを使用した戦闘兵器ストレイヴァー。その先行量産型S-M01。正式量産型S-M01Aが100機製造中だという話はしたな?」
37歳・・・彼もまた自分と同じく若くして組織上部に上った男。そのことはシュナイト大尉も重々理解していたし、否定するつもりもない。きっと何か考えがあるはずだ。大尉は少し落ち着きを取り戻すと、彼の話を聞き始めた。
「アメリカで製造中で、あと2週間もすれば全機ロールアウトする予定だった。だが、トーヴ大尉の機体の件で装甲強度に致命的な弱点を発見。また残されたヴォルヴの体成分の分析等で更なる性能の向上が望める。時間がないのも判るが、その為にはこの3機のストレイヴァーを正式にアメリカバースト支部に送る必要がある。より、詳しいデータを取るために」
頷くしかなかった。
恐らく、総司令も承認したのだろう。V.A.S.Tの正式な決定なら・・・兵士の1人である自分が逆らうことなど出来ない。それに、このことで犠牲・・・トーヴ少尉のような者が減るなら・・・。
「戦力に不安は残るが・・・SH対応機であるXシリーズについては従来通り運用できる」
つまり・・・威舞の力を必要とする。ということか。
彼女の力無しでは・・やはり戦っていけないのだろうか?
SH計画によって誕生した者・・・彼女の、力を。
「自分は、タイプEを基地へ帰還させることを進言しようと思う」
「それはダメです!」
大尉はとっさに叫んでいた。せっかくのチャンスなのだ。彼女が変わることの出来るチャンス。
「何故だ?彼女は生態システムとして育てられてきた・・・!」
「でも、弓月総司令の下でその考え方は間違っていると!」
そう・・・彼女はもうタイプEではない。戸籍の上だけかもしれないが弓月総一郎の娘、弓月威舞なのだ。
「だが、もしヴォルヴが緊急に出現した場合どうすればいい?」
「・・・」
「確かに彼女の人権を唱えるのもいい。成長を望むことが悪いとは思ってはいない。だがその為に多くの人命が失われたら意味がない!そのことは大尉、君が一番分かっているはずだ。バーストは人権団体ではない」
確かにそうではある。
彼女1人と多くの人命を秤にかけることは・・・ダメだ・・・やはり間違っている。彼のその言葉の1つ、1つがシュナイトの胸に重くのしかかる。彼=ハルト副司令は副司令として、科学者として、中佐として・・・いやそれ以上に平和を願う人間としてこの状況を憂いているのだ。
「でも・・・」
それでも・・・
シュナイトが言いかけたとき、再びドアが開き1人の黒髪の男が入ってくる。彼の姿を認めるや否やシュナイト大尉、ハルト副司令は背筋をただし敬礼を送った。
「「弓月総司令」」
優しい眼を持つ武人。47歳とは思えない、いろいろなものを知り尽くした優しい物腰。全てを見通す瞳。それが弓月総一郎。V.A.S.T大佐にして最高司令官だった。
「ハルト君」
「はっ!」
「その案は却下だ」
どうやら話を外から聞いていたらしい。
「何故です?」
「彼女は人をいとおしむ“心”を知らない。それを知らない状態で戦えば周囲の人間を守りつつ戦うといったことが出来ない可能性もある」
「それは・・・しかし、もしヴォルヴが上陸した場合は!?」
手にしたコーヒーを掲げて、気さくな物腰でこう言う。
「衛星写真である程度のヴォルヴの座標は掴めている。前もって準備することも可能だろう」
「・・・」
ハルトは『わかりました』と言うように、黙って下を向いた。
「それに・・・」
2人を見つめると、弓月総司令は口を開く。
「彼女をフォルフォード学園に編入させたのは、その理由だけではない」
「と言うと?」
シュナイト大尉の疑問の言葉に、総司令は答える。
「“彼”がそこにはいる」
「彼・・・?」
「まさか!」
ハルト副司令の言葉に、静かに頷いた。
「・・・だが、協力するかどうかは彼次第だろう」
「そんな、ここはタイプAにやはり事情を話して・・・我々の権限で!」
「力で屈服させて見方にする。そのやり方は好まない。それに、その呼び方を私は好かない。私が総司令になった時に、そう言ったはずだ」
静かに、怒りを感じさえない口調であったが・・・その言葉の奥には明確な“意思”があった。
「・・・」
「それに、彼ら2人は“再会”したのだ。何か互いに変化が起こるのかもしれない」
「・・・」
科学者でもある彼にとって、そういった精神的なことはあまり信じられないだろう。Xシリーズの声紋認証システムもそうだった。この優しい物腰の男、弓月総一郎は精神や魂を重んじる・・・そういう男だ。
「ですが・・・総司令!」
反論しようとした時だった。
「コーヒー遅くなりました。総司令の分作っていたら遅くなっちゃって・・・ってあっ!」
ドテッ!
この「ドテッ!」が彼女・・・瀬崎中尉が転んだ音だということは、言うまでもないだろう。だが彼女は片手を持ち上げ、コーヒーはこぼれないように死守していた。
「瀬崎中尉・・・」
シュナイト大尉が不安そうに彼女を見つめる。
「コーヒー遅くなりましたって・・・」
彼女の視線は、ハルト中佐へ移る。
「もう1杯・・・追加ですか」
彼女は、本当にマイペースらしい。
11:50
フォルフォード学園 2−G
HRが終わり、チャイムが鳴り響く。
『柊真は課題を出せよ。出なければ下手をすれば留年だからな』
そんな言葉を残し、モニターに写る先生の姿は消えた。今日は始業式、授業はそう長くない。教室を見るととなりの机・・・すなわち弓月の席をエイジ達が包囲し、自身達の自己紹介と弓月の自身への質問に興じていた。
「どこに住んでいたの!?」
「・・・きち」
「彼氏は!?今いるの?」
「・・・“かれし”・・・なに?」
何か微妙にかみ合わない会話を繰り返している。柊真は、そんな会話を尻目に立ち上がった。
「柊真さん?」
さおりの問いかけに、軽くこう言う。
「帰る」
「部活は?」
フィナの問いかけに、首を振ると彼はそのまま教室を出てしまった。
「ったく、正直になれないやつだなぁ・・・あいつは」
エイジは柊真の後姿を見ながら毒づく。先程は柊真にキツイ言い方していたエイジだったが、結局は年長者として柊真のことが心配なのだ。軽くて猪突猛進に見えがちなエイジだったが、なんだかんだでクラスのムードメーカー兼まとめ役である。
最も、それは委員長であるさおり、明るく元気だけがとりえのフィナも同じではあったが・・・。
「あれ、威舞さんは?」
さおりのその声に振り返ると、さっきまで机にいたはずの威舞の姿が消えていた。
「あれ・・・?」
フィナも首を傾げている。
タタタタタッ
足音に再び教室のドアの方に振り返ってみると、かすかに鞄を持って走り去る威舞の姿を捉えることが出来た。
12:00
「腹減ったなぁ・・・」
何も入っていない鞄を肩に担ぎ、帰り道を下っていく。そんな柊真の頭上には散っていくピンク色の桜があった。いくつかの花びらが青空を背に舞い上がる。そして、頭の上にチョコンと載った。
それを柊真は無造作に払うと、歩き始める。
「ん」
動きが何かにさえぎられている。よく見ると、制服のブレザーが何かに引っ張られていることが分かった。細い指、こんなことをする奴を柊真は1人しか知らない。
「おい、フィナ」
離せよ、振り返りそう告げようと思った。だがそこにいたのは・・・フィナではなく、今日初めて出会った1人の少女。
「弓月?」
その言葉に首を振って、こう言った。
「いぶ・・・いい」
(それは“威舞”と呼べということなのか?)
何故、会話を暗号のように頭で反芻しなければならないのか?という疑問が柊真に浮かんだが、仕方ない。
「威舞って呼べばいいのか?」
その言葉に、彼女はコクンと頷いた。だが、彼女の指はしっかりとブレザーの袖をホールドして、離してくれそうにはない。
「なぁ・・・離してくれないか?」
その言葉に、彼女は首を縦に振ることはなかった。柊真の知る限り、この転校生は人生で一番不思議な転校生だろう。
NEXT:04.遭遇
「STRAIGHVER」
(ストレイヴァー)

「完全オリジナル創作:リアルスーパーロボットストーリー」
を掲げ、SF性、ロボットアクション、恋愛や人間模様等を追求していきます!!
このSIDE:BLOGでは、「夏休み特別企画」としてこのSTRAIGHVERのエピソードをブログに掲載していきたいと思います!!
これを読みまして興味を持った方、デザイン等が気になるという方は・・・
STRAIGHVER HOME
から、一気に一覧で読むことが出来ます!!そちらには、イラスト、メカニックデザイン、キャラクターデザイン、また「勝手に想定声優」や「勝手にイメージソング」等もチェックすることが出来ます!!
では、是非一読ください!!
03.少女
新暦・・・
それは新たな時代の始まりを告げた。「西暦最後の戦争」から50年、その恒久的な平和が保障された時、“新暦”という時代は始まった。
もともとその「西暦最後の戦争」で、世界はある種統合されていた。日本以外の国が国として機能しなくなり始めていたのだ。自然な流れで日本がリーダーシップを取り、統一への道を歩むこととなる。無論、統一や平和が簡単な道だといえば決してそんなことはない。むしろ・・・苦難の道であった。それらを乗り越えた2057年、“新暦”は始まったのだ。
この地球を統括している世界統一国家は、安全とそのシステム上、首都をランク付けして様々な場所に置いている。その多くは、中心国である日本に多く存在していた。
第1首都 東京
第2首都 大阪
第3首都 ニューヨーク
第4首都 ロンドン
第5首都 静岡
Etc.
これらいくつものの首都が、互いをカバーしあい、“何かがあれば”そこに首都や権限を移動する。それがこの多首都システムの目的だった。
だが・・・何故、こんな平和な世界に“何かが起きた為の”多首都システムが必要なのだろう?軍隊もない、戦争もない・・・。この新暦の世界に、武装というものは存在しないというのに。
いや・・・
・・・・表向きは。
4/7 10:00
V.A.S.T メインファクトリー
第五首都静岡から少し離れた、ここ第十七首都長野。この新暦時代になってもあまり発達していない山奥・・・のどかな町並み。その山奥に、対地球外生命体特別迎撃組織・・・VOLVE.Attacker.Special.Team・・・通称V.A.S.Tの秘密本部があることは・・・極秘中の極秘とされていた。
その基地内のメインファクトリーには、3機の量産型STRAIGHVER・・・通称「甲」が先日の戦闘から帰還し、各種のメンテナンスを受けている。
そんな様子を少しはなれたパイロット待機室から、ブライ・シュナイト大尉は見つめていた。待機室には広い強化型の窓が設置されており、整備班の様子がよく見える。彼ら整備班の頑張りで、自分達パイロットが頑張れるのだから。
「大尉!」
振り返ると、量産型STRAIGHVER2号機のパイロット、カレナ・瀬崎中尉の姿が飛び込んできた。
「どうした?瀬崎中尉?」
「コーヒー飲みますか!」
かなり・・・元気な声で訪ねられた。そうなると断ることも出来ないし、断る理由もない。ちょうど、手も喉も何かほしがっていたところだった。
「じゃあもらおうかな。ブラックで」
「はい!」
そういうと彼女は自動で開くドアから出ようとした・・・が、
「あっ!」
ドタッ!
ドアの、ちょっとした出っ張りに足を引っ掛けそのままうつ伏せに転んでしまった。
「大丈夫か!?」
いつものことながら、シュナイト大尉はいつも焦らされる。
「大丈夫です・・・」
そういいながらも、彼女の顔は赤くなっていた(もちろん、血ではなく恥ずかしさで・・・であろう)。
「じゃあ、コーヒーついで来ますねって・・・あっ」
ドタッ!
また転んだ。彼女は右手で恥ずかしそうにポリポリと頭を掻くと、そのまま待機室を飛び出した。
「はぁ・・・」
彼女は、瀬崎中尉は自分を励まそうとしているのだと、シュナイト大尉は思う。トーヴ少尉を失ったことで、暗い雰囲気になるのが嫌のだろう。だが、自分達は軍人だ。この平和な社会・・・各国が1つとなり、各軍隊が武装解除し、平和な世界となって。最後の武装組織だったA.Ze.T.もとうの昔に解散した。
「本当に最後の武装軍・・・」
それがV.A.S.T。だが、V.A.S.Tの敵は地球外生命体、未知なる敵である以上危険度は高い。死は覚悟の上だった。
「でも・・・」
それでも23歳、若かった彼を失ったことは大きい。格納庫で整備されていく機体・・・整備班はフル稼働だった。先行量産型STRAIGHVERは3機。その内の1機は機体に大きな穴が空いていて、とても再起動できる状態ではない。それを確実に整備していく。
だが、パイロットはもう戻らない。
「これは、リーダーである僕の責任でもある・・・」
窓の外・・・遠くを見つめながら、シュナイトは呟いた。
「それは背負いすぎですよ、シュナイト大尉」
ドアの開く音と同時に声が聞こえる。振り返ると、そこには白衣姿の青年が立っていた。彼に向かって敬礼を送る。
「ハルト副司令」
このV.A.S.T内で二番目に高い位を持つ男は、笑顔でこう言った。
「確かにトーヴ大尉の殉死は大きい。しかし、彼は我々研究班に様々なものを残してくれた」
そう言いながら、ベル・ハルト副司令は窓の外を見下ろす。整備班の横に複数の白衣の者達がボードを片手に機体をチェックしていく。
「ストレイヴァーの胸部装甲に関しての弱点。それに行動を停止したはずのヴォルヴの生体構造。それらをフル稼働でチェック中だ」
ロシア人特有の銀色の髪を靡かせながら、彼は言う。シュナイト大尉は怪訝そうな表情を浮かべた。彼の言葉に棘はないし、本心から思っていることも判る。言っていることも正論だ。だが、それではまるでトーヴ少尉のことを“仕方ない犠牲”と言っているように聞こえて仕方ない。そんな彼の心情を見越してか、ハルト副司令は口を開いた。
「無論、トーヴ少尉のことは・・・残念に思う」
これがハルト副指令の精一杯の想いだった。V.A.S.Tには統率を図る為、“階級”が曲がりなりにも存在している。曲りなりにも・・・といったのは、組織は軍隊ではなく形上は私設組織ということになる。その為、かつての軍隊のような大将や元帥といった高い階級は存在せず、役職に応じた階級が振り当てられる。最高でも大佐までだ。
自分は階級で言えば、中佐。シュナイト大尉より上であった。その上の階級にものを申そうとはしないし、したくないであろう。ならば彼の心情を察してこういったように思いを伝えるのが・・・上官として自分が出来ることではないだろうか?と思うのだ。
「それより副司令、お忙しい中わざわざパイロット待機室まで来たのは、何か事情があってでは?」
「・・・その件なんだが」
息を深く吸い込み、ハルト副司令は言う。
「この1週間の間、S-M01型先行量産型ストレイヴァーの使用は不可となった」
その言葉に、当然シュナイト大尉は驚きと焦りの表情を浮かべた。
「何故です!?ヴォルヴ先行攻撃隊は30体近く太平洋のどこかに既に落下しているんですよ?今主戦力である3機のストレイヴァーを1週間も使用不可とするのは・・・!もしその間に本土上陸があった場合はどうすれば!!」
我々V.A.S.Tは戦う為の組織だ。トーヴ少尉のような犠牲は、言い方は悪いがしょうがない。だが、上陸し・・・一般の民間人に危害が及ぶことは・・・なんとしても避けなければならない!なのに・・・何故このタイミングで先行量産型STRAIGHVER3機が使用不可なのだ?シュナイト大尉は腹の中で沸き上がる感情で一杯だった。
「・・・整備は1日で間に合うというお話では!?」
窓の外に整備されていくSTRAIGHVERは、トーヴ大尉の3号機を除き、既に出撃可能のように見える。
「落ち着いてくれないか?これでも最大限の努力の結果なんだ。レアメタルであるメタル:ストレイヴを使用した戦闘兵器ストレイヴァー。その先行量産型S-M01。正式量産型S-M01Aが100機製造中だという話はしたな?」
37歳・・・彼もまた自分と同じく若くして組織上部に上った男。そのことはシュナイト大尉も重々理解していたし、否定するつもりもない。きっと何か考えがあるはずだ。大尉は少し落ち着きを取り戻すと、彼の話を聞き始めた。
「アメリカで製造中で、あと2週間もすれば全機ロールアウトする予定だった。だが、トーヴ大尉の機体の件で装甲強度に致命的な弱点を発見。また残されたヴォルヴの体成分の分析等で更なる性能の向上が望める。時間がないのも判るが、その為にはこの3機のストレイヴァーを正式にアメリカバースト支部に送る必要がある。より、詳しいデータを取るために」
頷くしかなかった。
恐らく、総司令も承認したのだろう。V.A.S.Tの正式な決定なら・・・兵士の1人である自分が逆らうことなど出来ない。それに、このことで犠牲・・・トーヴ少尉のような者が減るなら・・・。
「戦力に不安は残るが・・・SH対応機であるXシリーズについては従来通り運用できる」
つまり・・・威舞の力を必要とする。ということか。
彼女の力無しでは・・やはり戦っていけないのだろうか?
SH計画によって誕生した者・・・彼女の、力を。
「自分は、タイプEを基地へ帰還させることを進言しようと思う」
「それはダメです!」
大尉はとっさに叫んでいた。せっかくのチャンスなのだ。彼女が変わることの出来るチャンス。
「何故だ?彼女は生態システムとして育てられてきた・・・!」
「でも、弓月総司令の下でその考え方は間違っていると!」
そう・・・彼女はもうタイプEではない。戸籍の上だけかもしれないが弓月総一郎の娘、弓月威舞なのだ。
「だが、もしヴォルヴが緊急に出現した場合どうすればいい?」
「・・・」
「確かに彼女の人権を唱えるのもいい。成長を望むことが悪いとは思ってはいない。だがその為に多くの人命が失われたら意味がない!そのことは大尉、君が一番分かっているはずだ。バーストは人権団体ではない」
確かにそうではある。
彼女1人と多くの人命を秤にかけることは・・・ダメだ・・・やはり間違っている。彼のその言葉の1つ、1つがシュナイトの胸に重くのしかかる。彼=ハルト副司令は副司令として、科学者として、中佐として・・・いやそれ以上に平和を願う人間としてこの状況を憂いているのだ。
「でも・・・」
それでも・・・
シュナイトが言いかけたとき、再びドアが開き1人の黒髪の男が入ってくる。彼の姿を認めるや否やシュナイト大尉、ハルト副司令は背筋をただし敬礼を送った。
「「弓月総司令」」
優しい眼を持つ武人。47歳とは思えない、いろいろなものを知り尽くした優しい物腰。全てを見通す瞳。それが弓月総一郎。V.A.S.T大佐にして最高司令官だった。
「ハルト君」
「はっ!」
「その案は却下だ」
どうやら話を外から聞いていたらしい。
「何故です?」
「彼女は人をいとおしむ“心”を知らない。それを知らない状態で戦えば周囲の人間を守りつつ戦うといったことが出来ない可能性もある」
「それは・・・しかし、もしヴォルヴが上陸した場合は!?」
手にしたコーヒーを掲げて、気さくな物腰でこう言う。
「衛星写真である程度のヴォルヴの座標は掴めている。前もって準備することも可能だろう」
「・・・」
ハルトは『わかりました』と言うように、黙って下を向いた。
「それに・・・」
2人を見つめると、弓月総司令は口を開く。
「彼女をフォルフォード学園に編入させたのは、その理由だけではない」
「と言うと?」
シュナイト大尉の疑問の言葉に、総司令は答える。
「“彼”がそこにはいる」
「彼・・・?」
「まさか!」
ハルト副司令の言葉に、静かに頷いた。
「・・・だが、協力するかどうかは彼次第だろう」
「そんな、ここはタイプAにやはり事情を話して・・・我々の権限で!」
「力で屈服させて見方にする。そのやり方は好まない。それに、その呼び方を私は好かない。私が総司令になった時に、そう言ったはずだ」
静かに、怒りを感じさえない口調であったが・・・その言葉の奥には明確な“意思”があった。
「・・・」
「それに、彼ら2人は“再会”したのだ。何か互いに変化が起こるのかもしれない」
「・・・」
科学者でもある彼にとって、そういった精神的なことはあまり信じられないだろう。Xシリーズの声紋認証システムもそうだった。この優しい物腰の男、弓月総一郎は精神や魂を重んじる・・・そういう男だ。
「ですが・・・総司令!」
反論しようとした時だった。
「コーヒー遅くなりました。総司令の分作っていたら遅くなっちゃって・・・ってあっ!」
ドテッ!
この「ドテッ!」が彼女・・・瀬崎中尉が転んだ音だということは、言うまでもないだろう。だが彼女は片手を持ち上げ、コーヒーはこぼれないように死守していた。
「瀬崎中尉・・・」
シュナイト大尉が不安そうに彼女を見つめる。
「コーヒー遅くなりましたって・・・」
彼女の視線は、ハルト中佐へ移る。
「もう1杯・・・追加ですか」
彼女は、本当にマイペースらしい。
11:50
フォルフォード学園 2−G
HRが終わり、チャイムが鳴り響く。
『柊真は課題を出せよ。出なければ下手をすれば留年だからな』
そんな言葉を残し、モニターに写る先生の姿は消えた。今日は始業式、授業はそう長くない。教室を見るととなりの机・・・すなわち弓月の席をエイジ達が包囲し、自身達の自己紹介と弓月の自身への質問に興じていた。
「どこに住んでいたの!?」
「・・・きち」
「彼氏は!?今いるの?」
「・・・“かれし”・・・なに?」
何か微妙にかみ合わない会話を繰り返している。柊真は、そんな会話を尻目に立ち上がった。
「柊真さん?」
さおりの問いかけに、軽くこう言う。
「帰る」
「部活は?」
フィナの問いかけに、首を振ると彼はそのまま教室を出てしまった。
「ったく、正直になれないやつだなぁ・・・あいつは」
エイジは柊真の後姿を見ながら毒づく。先程は柊真にキツイ言い方していたエイジだったが、結局は年長者として柊真のことが心配なのだ。軽くて猪突猛進に見えがちなエイジだったが、なんだかんだでクラスのムードメーカー兼まとめ役である。
最も、それは委員長であるさおり、明るく元気だけがとりえのフィナも同じではあったが・・・。
「あれ、威舞さんは?」
さおりのその声に振り返ると、さっきまで机にいたはずの威舞の姿が消えていた。
「あれ・・・?」
フィナも首を傾げている。
タタタタタッ
足音に再び教室のドアの方に振り返ってみると、かすかに鞄を持って走り去る威舞の姿を捉えることが出来た。
12:00
「腹減ったなぁ・・・」
何も入っていない鞄を肩に担ぎ、帰り道を下っていく。そんな柊真の頭上には散っていくピンク色の桜があった。いくつかの花びらが青空を背に舞い上がる。そして、頭の上にチョコンと載った。
それを柊真は無造作に払うと、歩き始める。
「ん」
動きが何かにさえぎられている。よく見ると、制服のブレザーが何かに引っ張られていることが分かった。細い指、こんなことをする奴を柊真は1人しか知らない。
「おい、フィナ」
離せよ、振り返りそう告げようと思った。だがそこにいたのは・・・フィナではなく、今日初めて出会った1人の少女。
「弓月?」
その言葉に首を振って、こう言った。
「いぶ・・・いい」
(それは“威舞”と呼べということなのか?)
何故、会話を暗号のように頭で反芻しなければならないのか?という疑問が柊真に浮かんだが、仕方ない。
「威舞って呼べばいいのか?」
その言葉に、彼女はコクンと頷いた。だが、彼女の指はしっかりとブレザーの袖をホールドして、離してくれそうにはない。
「なぁ・・・離してくれないか?」
その言葉に、彼女は首を縦に振ることはなかった。柊真の知る限り、この転校生は人生で一番不思議な転校生だろう。
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